ぼくを探しに(Attila Marcel)

"記憶の期限"


映画『ぼくを探しに』予告編 - YouTube

 

今日の晩御飯は何にしようかな。あれ、昨日の晩御飯何食べたっけ。そんなことを考えながらスーパーの野菜売り場でかれこれ10分自分の記憶を辿っていました。

ちなみに昨日はチキンサラダで、今日は唐揚げです。

 

さてさて、記憶は一体どこまで持つのか。冷蔵庫の奥底の野菜のように、忘れられ、腐り、捨てられるようなものなのか。それとも添加物いっぱいの某ファストフード店のように、いつまでも残り続けるのか。

今回観た作品は、自分の過去の記憶を遡っていく映画です。記憶を遡って、自分を探していく。まるで自己分析ですね。

 

まあそんなことはさておき、ストーリーを。

親を亡くしてしまったショックで話すことができなくなってしまった青年は、ピアノの才能があるものの大会で優勝まではいかない。普段は親戚のおばさん2人と、彼女らが経営するダンススタジオのピアニストとして日々を過ごしている。

そんな彼はひょんなことから階下に住むおばさんと交流するようになり、なんとそのおばさんは記憶を呼び起こすセラピーをやっていた!

そして記憶を遡るうちに衝撃の事実が...。

 

びっくりマークを使ったものの、物語は静かに、楽しげに進んでいきます。さすがフランス映画、メルヘンちっくな明るい色彩、おちゃめな音楽、おしゃれです。そう、この作品で特筆すべきところは、おしゃれであるということ。

いきなり予定がなくなった天気のいい平日。誘おうにしてもみんな仕事だし、家でゆっくりしようかな!な映画です。ほんとそんな感じです。

 

だんだんと明らかになる過去、重すぎない展開、目に優しい色彩。いい休日にしてくれそうです。

 

この作品を観ながら、自分の記憶はいつから残っているのか、記憶の期限みたいなものについて自分の人生を考えてみるのもおもしろいかと思います。

十二人の怒れる男(12 angry men)

"過程か、結果か、未来か。人間の判断とは"

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にしても暑い日が続きますね。北海道が恋しくなります。からっと晴れて気持ちいい。なおかつ夜はどれだけ飲んでも肌寒さに酔いが冷める。すばらしいです。

ちなみに上京して感動したのは、1年中自転車に乗れる!ということでした。

 

はい、昨日の"マレフィセント"では、視点が変われば事実が変わるみたいなことを書きましたが、今回はその過程みたいなお話です。"マレフィセント"では変わってからの見方でしたが、今回は見方を変えていく過程です。

 

作品自体は結構古くて、なんと1957年の映画。でも今見てもアッと驚く展開です。すごい。

お話は、陪審員制度で無作為に選ばれた12人が、父親を殺してしまった青年の判決を出すというものです。初めは1人だけ無罪に入れていたものの...なお話です。結末をいいます、逆転劇です。

たぶん初めてのネタバレですが、結果を知っていてもおもしろいのでご安心を。

 

さてさて、今回お話したいのは、人の判断ってなんなんだっていうことと、それを踏まえた上での未来の可能性の2点です。

 

1点目。この作品の中で、いや、裁判で重要視されるのが目撃者の証言。今回もかなりキーになる話題です。しかし、作品を見ていくうちにそれは事実ではなく、目撃者の主観が入ったもの、欲求が混じったものであることがわかります。思いっきりネタバレです。すいません。

ひとつひとつを大事に検証すること。主観を排除して事実を見つける作業。すごく難しいですね。なんでかって人間は欲求の塊だから。

最近、事実ってなんなんだと思うようになりました。中学生で止まっている歴史の勉強をもう一度したいなあと思います。

 

2点目。容疑者が青年であるということで、大事になってくるのがその青年の生い立ちと周りの状況、そして未来です。青年だから〜、まだ若いから〜といって許されることでは決してありませんが、まだ見ぬ可能性を秘めていないとは言えません。そこらへんもこの映画で焦点となってきます。

 

あ、あと1点ありました。無関心。

最近はSNSの流行で、人と人とのつながりが希薄になっているとはよく言いますが、それって本当にSNSだけのせいなのか。そんなことをこの作品を観て思います。思い思い自分の時間があり、でもやらなければいけない義務も存在する。そしてそれは1つの命を左右してしまう。そんな中でも自分の欲求を優先してしまう。なんでかって無関心だし、どうでもいいから。

 

本当にこの映画は考えるきっかけを与えてくれます。昔の映画だから〜なんて敬遠せずに、是非一度観てみてください。十分に2時間を費やす価値があると思います。

 

みなさんは無罪にしますか?有罪にしますか?

ムード・インディゴ うたかたの日々(L'ecume des Jours)

"おとぎ話も残酷だ"


映画『ムード・インディゴ うたかたの日々』予告編 - YouTube

 

信号待ちの間に汗をかくほど気持ち悪いことはありません。やっぱり夏は北海道。東京は嫌いです。さてさて、そんな暑い夏に観る映画といえば!なわけではないんですが、今回はおとぎ話のような、現実感のあるお話。暑さがまだ残る夕暮れ時、一人で考え事をしてしまうそんな時間帯に、ぴったりではないですがそんなこともない作品です。

 

と、いうわけで今回の作品はこちら。"ムード・インディゴ うたかたの日々"。

原作はボリス・ヴィアンの「日々の泡」です。そう、フランスの小説です。この原作は何回か映画化されているものの、その独特な世界観を映像に起こすのが難しい(らしい)。ということで現在小説も読んでますが、やっぱり難しそうです。

 

なんてったって登場するモノ、ヒトがもうすんごい。ピアノを弾くだけでカクテルができるカクテルピアノに始まり、家の作業を手伝ってくれるネズミ、終いには肺に睡蓮の花が咲いてしまうヒロイン。もうわけがわかりません。

まあ、なんで観たいと思ったかって、そのヒロインがオドレイ・トトゥなんですね。そう、言わずと知れた"アメリ"のアメリです。

 

フランスの女優さんは映し方によってはきれいにもなるし、普通のおばさんにもなる。そんなところに魅力を感じている大学生です。ちなみにフランスの女優さんだと、エヴァ・グリーン、レア・セドゥらへんがたまりません。昔の方に行くと、ブリジット・バルドーなんかもいいですね。はい、作品の方に移ります。

 

監督は"エターナル・サンシャイン"のミシェル・ゴンドリー。色彩感覚に定評があります。今回の作品もとにかく色合いがすごい。前半の幸せ満載ムードの、なんとも言えぬおとぎ話のような淡い明るさ。そして中盤から後半の、どんどん色が落ちていく感じ。雰囲気を世界に落とし込んでいます。

 

とまあ色彩は観ているだけですごくおもしろい。しかし、何と言っても映像化が難しい。レトロSF何て言葉があれば、それっぽく作ってあるものの、ちょっとおいてかれます。原作を読み終わってないのでなんとも言えませんが、難しそうということは冒頭を読んだだけでわかります。はい、難しそうです。

 

ストーリーの方に移っていきます。

働かなくても財産がある青年が、ある日恋に落ちるところからお話は始まります。二人は夢のような日々を送るものの、新婚旅行先で、ヒロインの肺に睡蓮の花が咲いてしまい、主人公は医者代のために働かなければならなくなる。ここで病気が治ってハッピーエンド!になると本当におとぎ話。でもならないのがこの作品であり、この原作。

 

人生はうまくいくだけではないんです。暗いまま話が終わるあたり、現実主義的なものを感じます。

 

ディズニー映画大好き!な女の子にはなかなか向かないような気もしますが、暑い夏、少し気分が落ち込んでもいいのではないでしょうか。夏は関係ありませんが、そんな作品でした。

マレフィセント(Maleficent)

"視点が違えば事実も違う"


『マレフィセント』予告編 - YouTube

 

本当の話、真実ってなんだ。名探偵コナンではよくもまああんな簡単に真実を見つけられますなあとしみじみと感じる映画がこちら。

はい、そうです。今回観た作品は"マレフィセント"。

 

公開時にはだまされた!みたいな話をよく聞いたものですが、まあだまされます。

それもそのはず、今回の主人公は"眠れる森の美女"のオーロラ姫ではなく、ヴィランズのマレフィセント。そして何が一番だまされるポイントかって、主人公なんです。

必ずネタバレになってしまうので詳しいことは書けませんが、マレフィセントが主人公なのです。勘のいい人はもうわかってしまったでしょうか。これ以上は言いません。主人公なんです。

 

そんなことはさておき、作品の中身に入っていきます。おおまかなお話は"眠れる森の美女"とほぼ一緒。ただひとつ、主人公がマレフィセントであることを除いて。おなじみの3人の妖精や、フィリップ王子なんかも出てきます。

最初、映画の始まりは、オーロラ姫が生まれるずっと前、人間の国と妖精の国がありました〜な感じです。実はこうなってて・・・な展開が続くかと思いきや、これほんと?となるくらいディズニーファンを裏切っていきます。

マレフィセントの苦悩や葛藤なんかに特に焦点が当たっていて、オーロラ姫はもはや脇役。もっといえば物語の鍵を握るであろうフィリップ王子なんてちょい役でした。

 

では次に作品の世界観に入っていきます。いやー、難しいとは言え、少し残念な印象です。妖精の国は想像通りすごくメルヘンな雰囲気でいいはずだし、さすがディズニーと言わんばかりに作り込んできます。ただ、主人公が元々の悪役ってことで、そのダークな部分との融合にいまいち納得がいかない。難しいとは思います。だって正反対を共存させるんだから。でも欲を言えばもう少しがんばってほしかったです。

 

とまあ内容はこんな感じで、映画を観た感想っていうのは、2点。

1点目は、視点を変えれば事実が変わるということ。冒頭でもお話したように、話が180度変わってしまいます。この点に関して言えば、視点の変更は最高におもしろい。これもまた真実だよね!って感じで、物事の見方について少し考えます。

 

そして2点目は、人間の欲ってのは恐ろしい、ということ。妖精は純粋無垢であるって仮定が存在するからこその考え方ではあるものの、欲に溺れ、本当に大事なものを見失う危険性を常に伴っているのが人間かと思います。欲のために正当化し、いざとなっては正義として振りかざす。恐ろしいものです。そういう大人にはなりたくないなあと就職活動中の大学生はふと思いました。

 

以上、アイディアは斬新。世界観がちょっと微妙。アンジェリーナ・ジョリーは最高に美しい。この3点でこの感想を書き終わろうと思います。

そこのみにて光輝く

"スパイラル的絶望"


『そこのみにて光輝く』予告 - YouTube

 

はい、すっかり忘れていたFacebookでの告知。告知をした瞬間にアクセス数が急激に伸びました。SNSは偉大だなあと思うこの頃です。

 

さてさて、今回は邦画。普段あまり観ない分、あれやこれやと比較はしにくいものの、頑張って感想書きます。

 

ということで今回は"そこのみにて光輝く"。呉美保監督、主演に綾野剛さん、そして池脇千鶴さん。

夏の北海道を舞台に、這い上がりたくてもなかなか這い上がれない男女を描いてます。

同じ北海道出身ということで、なかなか北海道が舞台となっている映画は気になります。他に最近気になっているのは、二階堂ふみさん主演の"私の男"や、佐藤浩市さん主演の"愛を積む人"。近いうちに観て感想書きます。

 

さ、作品の中身に入っていきます。

 

まず原作。原作は佐藤泰志さんの同名小説。残念ながら佐藤さんの本を1冊も読んだことはありませんが、調べてみるとなかなかに重そうなお話が多い。自律神経失調症を患い、最後には自殺。この暗さがどこまで映画に出ているのかはわかりませんが、本も読んでみたくなりました。

 

そして映画です。この作品、なんといっても見所は、全編を通して重い、というところ。単純にストーリーが重いというのもありますが、それを際立たせるのが写し方ですね。この作品、なかなか空を映さない。ストーリーだけでも重いっていうのに、さらに重くさせる原因がこれなのではないでしょうか。

そして光。泥沼のスパイラルに陥っていて、その中で少しでも希望が見える瞬間に、いい具合に明るくなるんです。でもこれは単純に明るいとかではなくて、反語的な明るさ。哀愁が漂うというか、どこか悲しげな明るさです。

ほんっとに暗い、というか悲しい。

 

どこまでも落ちてしまうし、救いの影なんて全然ない。ちょっと浮いたと思いきやまたすぐ沈む。タイトル通り、そこのみにて光輝く

邦画の良さって、やっぱりこういう人間のどん底というか、暗い感じがぴったり似合うと思います。

 

それはさておき、池脇千鶴さん。止まらなくエロいです。"ジョゼと虎と魚たち"で見せたときよりもエロい。アクセス数が増えたけど、いつものように下ネタと女優の話は止まりません。だる〜っとしたやる気のなさから、エロさが全面に溢れ出ています。

今回の作品にぴったりな女優さんでした。

 

あと一点気になるのは、やっぱり方言。

舞台となっている函館は、北海道の中でも少し方言が違うことを考慮しつつも、観てて違和感を覚えました。函館の皆さん、あれであっていたらなんかすいません。

 

どん底まで暗い中のちょっとした希望という明るさが美しい。そんな映画でした。

イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)

"フランスって上品だ"


映画『イヴ・サンローラン』予告編 - YouTube

 

1日2本の好ペース。多い時には1日に5本くらい観ます。

最近は朝起きて洗濯してシャワー入って、映画観て。お昼ご飯作って映画観て。夜ご飯作って映画観て、シャワーに入って寝るという生活をしています。主婦みたいなことしてる男子大学生です。

 

さてさて、本日2本目の作品は、超有名ブランドの創始者である、イヴ・サンローランのお話です。彼の伝記的な映画で、なんと今回イヴ・サンローランの全面協力を受けて制作されたとか。

 

はい、さすが協力もあって全体的におしゃれです。上品で優雅で、それでいて華やかさも彼自身の葛藤や苦悩も表現できている。おしゃれ映画です。

"アメリ"とはまた違う、コミカルさのないおしゃれ。つまり上品です。

 

ファッションブランドの話だから当たり前っちゃ当たり前かもしれないんですが、とにかくカットの1つ1つが美しい。それぞれが絵画的に成り立っていて、雰囲気で流すだけでも価値があるのではないかと思います。

 

しかし。ストーリーは別にそんなにこない。んー、彼の天才的な才能であったり、同性愛の描写であったり、どこかありきたりな印象。演技が悪かったわけでは決してないと思うんだけど、なぜかぐっとこない。

唯一グッときたのは、サンローランを支え続けるピエール。彼はすごく信念を持って、時には心を鬼にしてサンローランに接したのではないかと思います。わざと◯◯した!的な行動が多く、本当に心から信じているんだな、期待しているんだな、愛しているんだなって思いました。

 

同性愛の本気を観たいなら"アデル、ブルーは熱い色"がおすすめだし、伝記的な映画を観たいなら"ストックホルムでワルツを"がおすすめ。

 

ストーリーは中途半端、ただしカットは美しい。

良くも悪くもファッションブランドらしい映画でした。

おおかみこどもの雨と雪

"人と違って何が悪い"


映画「おおかみこどもの雨と雪」予告1 - YouTube

 

言わずと知れた細田守監督。アニメーションがきれいです。時をかける少女」「サマー・ウォーズ」と来て、今回観たのは「おおかみこどもの雨と雪」。アニメーションがきれいです。

 

はい、ということで内容に入っていきます。

おおかみおとことの間にできたこども、雨と雪がいろんな障壁を乗り越えて成長していくってお話。お母さんの花役に宮﨑あおいさん、他声優陣には菅原文太さんや麻生久美子さん、今話題の黒木華さんが出ています。相変わらず声優陣、豪華です。

 

この作品で考えるポイントは、「人と違うことをどうするか」ということだと思います。おおかみと人間のハーフなんて、まず絶対的に他の人間と違う。自分の人生の選択をどうすべきか、そしてそれをどう見守るのか。

人と違ったっていいじゃないか、自分の生きる道を選ぶことが重要である。そんなメッセージを感じます。

 

「人生はマラソンじゃない」ってリクルートのCMがありますが、まさにそんな感じです。おおかみとしての人生、人間としての人生。人にはそれぞれ秘密、選択があって、それぞれにしかわからない世界がある。

 

あとこの作品で書いておきたいのは、やっぱり自然はいい、ということ。都会に住んでいた頃の生活では難しくなり、田舎の方に引っ越して新たな生活が始まるんだけど、すごくきれいに描かれているし、地元の北海道を思い出すし、個人的にかなり好きです。田舎。

 

都会も楽しいけど、ごちゃごちゃしている分見えないことも多いのかな。ありきたりなストーリー展開ではあるけれど、見ていて心地よくなるよい映画だったと思います。こどもから大人まで、そして将来を悩む学生にも。

考えるところは違えど、誰にでも楽しめるいい内容でした。